狛犬の製作・管理〜神社での舞台製造・施工・設置一式を行いました。

平成23年10月奉納。豊田市稲武町の八幡神社入り口に、新たに狛犬を奉納する案件のご依頼がありました。
狛犬本体の製造から完成まで約3ヶ月、案件のご依頼をいただいてから設計完成まで約10ヶ月間のプロジェクトでした。(奉納者 岡松 隆夫様 一二三様 ご夫妻)
飛鳥時代に仏教伝来とともに日本に伝わったとされる狛犬ですが、江戸時代から現代にかけて大きく広まり、江戸や浪速を中心にたくさんの数が造られました。石の都・岡崎でも多くの石工たちが狛犬を残しています。今回製作した「宝珠狛犬」とは、江戸時代中期の職人の為の絵手本「諸職画鏡(しょしょくえかがみ)」に描かれたオリジナルモデル。この書を元に、岡崎の石工が宝珠狛犬を彫り始めたのは幕末安政期で、塩の道で知られる『中馬街道』の道沿いの神社に、幕末から大正初期多く建てられました。
一般的な狛犬は、無角の獅子(「阿」開口)と有角の狛犬(「吽」閉口)とが一対となった狛犬が多いですが、
「宝珠狛犬」は獅子が頭上に宝珠をかたどったものを載せているのが特徴です。


狛犬の彫刻・製作開始

今回狛犬の製作をお願いしたのは、岡崎市で狛犬製作を専門にしておられる巽彫刻の綱川 潔 師。古くから伝わる狛犬の研究を重ね、伝統を重んじた中に独自の表現を織り交ぜた狛犬づくりの第一人者で、一品一品手彫りにこだわる技で全国各地の古い狛犬の建て替え、再現等の彫刻を生業としておられる現代において数少なくなった本物の石職人です。


はじめは巨大な花崗岩の塊

動かすのはクレーンで

昔ながらの手彫り道具を多用

まさに職人技です

 


中国工場にて製造中の、台座(猫足)の検品

狛犬彫刻と同時に、狛犬を載せる舞台や台座づくりも行います。台座はその姿の通り「猫足」と呼ばれ、丸みがかった脚が特徴。墓石製造でなじみのある中国の工場に製造を依頼し、綱川師製作の狛犬の台座として恥ずかしくないものとなるよう訪中し製作段階での検品をいたしました。


自身の目と手でチェック

まわりには墓石もあります

狛犬を設置する場所の基礎・配筋工事

狛犬や台座の製造とともに、奉納場所の神社にて基礎工事を同時進行で行います。狛犬奉納後の長い歴史をこれから築いていく場所ですから、入念でていねいな基礎工事を心がけています。


設計図に合わせ位置決め

石塔は土台づくりが肝心

砕石を敷き詰めて

セメント用の配筋を施す

基礎工事・免震施工~舞台の完成へ

安定した基礎の上に、狛犬を載せる舞台を設置します。舞台造営には墓石づくりでも活躍している免震システム「安震はかもり」を活用。美しさと力強さを兼ね備えた舞台を造ります。


基礎部にセメントを流し込み

乾燥を待ちながら段組み

四つ角を金属でがっちりと補強

基礎の石組みが完成

段ごとに配筋を施し

セメントで固めていきます

乾燥したら舞台の側面づくり

側面が斜めになった台形状

ここでも金属補強します

X形の切れ込みに金属を填める

さらに接着剤で補強

次に3段目も同様に石組み

さらに4段目へ

この段階ではまだ中は空洞

再び配筋を施し

舞台の中にセメントを入れ一体化

最後に分厚い天板を設置

舞台の天板施工・免震施工~台座(猫足)の設置

猫足に重量がかかります

猫足に免震施工

舞台と台座の完成です

片方が済んだらもう片方

背面には奉納者のお名前

狛犬の受入準備は万端です

巽彫刻さんの石彫工房から神社へ、完成した狛犬を運搬

こちらは獅子

こちらは狛犬

「阿」開口で頭に宝珠

「吽」閉口で頭に一角

これが宝珠(ギボシ)

見事な一角

獅子の体毛は巻き毛です

曲線の彫刻が美しい

狛犬の体毛は直毛

すき間の彫刻も見事

尻尾は三本捩れています

脚と台座は一体です

工房内を見渡すと、

製作中の狛犬たちが

新しく生まれた仲間を

見つめています

専用クレーンで持ち上げ

一体で約500kgの重量

二体が互いに見合うのも

今日が最初で最後?

生まれた工房を

あとにします

見送る仲間たち

いい日旅立ち

狛犬の設置~免震施工~全体の完成へ

いよいよ完成した狛犬を稲武町の八幡神社へ設置。岡崎、中国、稲武とそれぞれ動いていたプロジェクトのシナリオがここで一つとなり、全体の完成となります。


岡崎市から約40km

稲武町に無事到着

狛犬を舞台に

載せる前に準備

免震用の特殊ゲルを装着

左右の台座に施工

細かな作業が大切

こちらは「阿」の獅子像

クレーンで持ち上げ

静かに降ろします

位置決め・向きを合わせ

正確・精密に設置

左右の像が

そろい踏みです

凛々しい姿

表情も精悍

「吽」の獅子

「阿」の狛犬

神前の守護獣が

堂々完成です

完成を記念して

工事関係者全員で撮影

彫刻師・綱川 師と

稲武町・八幡神社はこちら


 
トラックから狛犬を降ろし、設置準備するシーンの動画です。

一体およそ500kgの重量があるので、作業は慎重に行いました。

 

石匠 綱川潔 師により現代に復活した、平成の “宝珠狛犬”

江戸時代中期に職人の為の絵手本『諸職画鏡(しょしょくえかがみ)』が発売され、中にオリジナルの狛犬が書かれていた。右の獅子『阿』開口で頭に宝珠(ギボシ)を乗せている、体毛は巻き毛で覆われ、左の狛犬『吽』閉口で頭に一角、体毛は直毛で表現、尻尾は三本捩れながら立ち上がる、安政に現れ大正に姿を消す。

この書を元に、岡崎の石工が宝珠狛犬を彫り始めたのは、幕末安政期で塩の道で知られる『中馬街道』の道沿いの神社に、幕末から大正初期多く建てられました。狛犬とは、ライオン像を日本風にアレンジした石像で、想像により宝珠型狛犬も彫られています。
石像狛犬は、石工が彫り続けている石文化なのです。